第37回日本二分脊椎研究会




ご挨拶

小柳 泉会長




第37回日本二分脊椎研究会
会長 小柳 泉
北海道脳神経外科記念病院 院長


 第37回日本二分脊椎研究会を2020年(令和2年)12月12日(土)に札幌で開催いたします。会場は、北海道大学医学部学友会館フラテの大ホールとしました。私は1981年に北海道大学を卒業しましたが、1994年に開催された第11回日本二分脊椎研究会で、初めて二分脊椎に関する演題発表を行いました。会長は北海道大学泌尿器科教授の小柳知彦先生で、会場は北海道大学構内の北海道学術交流会館でした。当時、私はこの前年に2年あまりのトロント留学を終えて北海道大学脳神経外科の助手になっていました。トロントでは脊髄損傷の基礎研究を行ってきましたが、大学に戻り脊椎脊髄疾患を専門とする脳神経外科医をスタートしたばかりでした。トロントではHospital for Sick ChildrenのDr. Hoffmanの脊髄脂肪腫の手術を見学する機会もあり、北大に戻ってからは脊髄脂肪腫の手術にも関わるようになっていました。この時の研究会では、潜在性二分脊椎に伴った係留脊髄の外科治療という演題名で、北大脳神経外科で手術が行われた脊髄脂肪腫症例の後方視的分析を行いました。この病態の自然経過がわからない、ということが当時も最大の課題でしたが、外科治療が行われる前までは自然経過である、という観点からの分析を行い手術の有効性を発表しました。この時の分析をもとに、その後いくつか論文を発表し、日本二分脊椎・水頭症研究振興財団からは第2回研究助成もいただきました。二分脊椎は脊髄損傷とともに、私のライフワークの一つとなっています。日本二分脊椎研究会には、私が札幌医科大学脳神経外科に在籍中の2005年に世話人に加えていただきました。北海道で本会が開催されるのは2001年の第18回(高橋義男先生が会長)以来、3回目になります。本会を会長として私の母校の講堂で開催できることを大変光栄に思います。

 さて、今回の研究会の主題は、「二分脊椎を知る」、としました。二分脊椎は古くから知られている病態ですが、発症機序はいまだ解明されていません。椎弓欠損部の皮膚欠損の有無によって、大きく開放性と潜在性に分かれます。開放性二分脊椎に関しては1991年に発表されたランダム化臨床試験以来、葉酸摂取が発症予防に有効であることがわかってきましたが、発症は少なくなっても完全に抑制はされていません。潜在性二分脊椎の代表的疾患である脊髄脂肪腫でも、手術治療が自然経過に与える影響に関して結論はでていません。本研究会が始まった1984年は、日本でMRIの臨床導入が開始されてきた時期であり、画像診断を含めて多くの知見が積み重ねられてきました。本疾患は、稀な疾患ですが極めて多彩な病態を示します。多くの臨床科と医療スタッフが関与しなければならない病態です。病気を正確に知ること、理解することは、基本的なことですが極めて重要です。本会では、二分脊椎の医療・知見に関するこれまでの到達点と課題を明らかにしたいと考え、このような主題としました。二分脊椎に関するあらゆる演題を募集いたします。特に開放性二分脊椎では、葉酸摂取のエビデンスと現況、急性期の修復術や水頭症管理、症候性キアリ奇形II型への対処、潜在性二分脊椎では、脊髄脂肪腫の手術方法と適応、長期成績、成人係留脊髄の病態と治療、そして、小児期から成人期に移行する際の問題点について、演題発表を通して理解を深めたいと考えております。

 北海道大学のキャンパスは旧理学部の建物を利用した総合博物館もあります。二分脊椎の患者さんの幸せを願い、活発な学術討論を行いたいと思います。皆様の多数のご参加をお待ちしております。