ごあいさつ

 時代が平成から令和へと代わり,令和の第1回目にあたる第48回人工心臓と補助循環懇話会(AH&ACの会)学術集会を北海道札幌市の定山渓温泉で開催させて頂くことになりました.定山渓温泉でAH&ACの会を開催するのは,私の恩師・三田村好矩先生が1993年に第21回大会以来,26年ぶりとなります.


 さて,現在,週刊ヤングジャンプに北海道を舞台にした漫画「ゴールデン・カムイ」が連載されております.これは,日露戦争終結後の北海道を舞台に,日露戦争で死線をくぐり抜けた元陸軍兵・杉元佐一とアイヌの少女・アシㇼパを主人公に,“不死身の杉元”の経験・強さと,アシㇼパのもつアイヌの人たちの生活にある様々な知識や知恵を合わせることで,多くの危機を乗り越える冒険物語です.そして,この漫画で紹介されるアイヌの人たちの知識や知恵は,厳しい北海道の自然と環境を理解した上での極めて合理的なものです.


 立場や経験が異なる人々の知恵やideaを互いに共有することが,総合的なパフォーマンスの向上につながることは,あらゆる世界に言えることで,多様性のもたらす効果です.人工心臓の世界においても,基礎系の先生方のもつ科学原理に基づく知識・知恵が補助人工心臓を装着する患者の安全に寄与し,また臨床系の先生方の経験が基礎系の先生方の新たな開発・研究のヒントになります.基礎系の先生方とメディカルスタッフの皆さんを含む臨床系の先生方,関連企業の皆様との対話・交流は,これからの人工心臓の発展に極めて重要と思っています.また,これこそがAH&ACの会の大きな目的の一つであり,AH&ACの会の特徴でもありますので,第48回学術集会でも,臨床系と基礎系の先生方,そして企業の皆様の対話・交流を大切にする大会にしたいと思っております.


 「ゴールデン・カムイ」の重要な舞台のひとつが,アシㇼパの住むコタン(集落)がある小樽周辺の原生林です.定山渓温泉近郊の札幌国際スキー場はこの原生林の中に位置し,その山頂からは小樽とこの原生林を一望できます.温泉,お酒を飲みながらの対話・交流,そしてスキー・スノーボードがセットのAH&ACの会らしい大会にしたいと思いますので,多くの先生方にご参加頂きますよう,お願い申し上げます.



第48回人工心臓と補助循環懇話会
代表世話人 岡本 英治
(東海大学札幌教養教育センター教授,理学部物理学科教授)