ごあいさつ








第29回日本シェーグレン症候群学会学術集会 会長
札幌医科大学医学部免疫・リウマチ内科学 髙橋裕樹

 この度、第29回シェーグレン症候群学会学術集会を2021年9月24日(金)・25日(土)の2日間、札幌で開催させて頂くにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

 当初の予定では2020年9月18・19日に開催させて頂く予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の鎮静化が見られないことから1年間延期とし、是非皆様に札幌にお越し頂けるよう、対面での学会開催を意図しておりました。しかしながら、皆様もご存じのとおり、このご挨拶を用意している現在(2021年3月)、ピークが過ぎたようにも見え、また医療者対象にワクチン接種が始まったとは言え、変異種の拡大もあり、コロナウィルスの蔓延については、まだ予断を許さない状況と考えられます。前回のご挨拶でも述べましたように、対面でのディスカッションや情報交換はリモートでは経験できないインパクトがありますので、集合形式での学会を模索しておりましたが、準備期間など諸般の事情もあり、今回の第29回学術集会はWEB方式で開催させて頂くこととしました。北海道訪問を楽しみにして下さっていた皆様のご期待に添えず、大変残念ではありますが、WEB開催のメリットを利用し、この2年間で蓄積されたであろうシェーグレン症候群・IgG4関連疾患に関する皆様の多くの知見や経験を発表する場として活用して頂けることを期待しております。WEB開催の場合,むしろ例年よりも参加者が増える研修会・研究会も経験しておりますので、今回に関しても是非、たくさんの発表とご参加をお願いしたいと思います。

 さて、シェーグレン症候群は2015年から国が認定した指定難病となっていますが、北海道は単独事業として以前から難病認定していた影響もあり、現在も47都道府県の中で、圧倒的に指定難病患者数が多い地域です。本症候群に関する医師の興味も強く、研究も活発に行われてきました。実際、本学会の前身であるシェーグレン症候群研究会の5回目が佐川昭先生により1996年に行われ、私と本会の関わりもこのときが始まりでした。その後、北海道で開催されることがありませんでしたので、24年ぶりにWEB開催とは言え、私が会長となって本会を行うことができるのは、その間のシェーグレン症候群やIgG4関連疾患をめぐる展開とあわせて、大変感慨深いものがあります。

 当科では、上述のような地域性を踏まえ、さらに先人の背中を見ながら、シェーグレン症候群という臓器特異的でありながら、かつ全身性自己免疫疾患・リンパ増殖性疾患の特徴を有する興味深い疾患に取り組んできました。特に、20世紀末のシェーグレン症候群改訂診断基準の策定に症例提供の形で協力させて頂きながら、研究会でかわされた熱い議論をreal timeで拝聴できたことは、疾患をどう定義するかという病気の本質を考える上で大変参考になりました。多少、手前味噌ではありますが、「シェーグレン症候群とは」「原因不明の涙腺・唾液腺炎とは」といった原点について当時考察したことが、21世紀にはいって確立したIgG4関連疾患の認知過程に当科が多少の貢献ができた要因の1つと思っています。また、シェーグレン症候群はリウマチ内科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科のみならず、複数の診療科や病理医,画像診断医などが関わる領域横断的な疾患ですから、本学会でシェーグレン症候群にまつわる幅広い知識を会得することは、ほかの自己免疫疾患を診療する上で役に立ちました。

 そこで今回の本症候群のテーマは「涙腺・唾液腺から全身を極める」とさせて頂きました。なにを今更と思われる先生もいらっしゃるかと思いますが、涙腺・唾液腺炎を入り口に全身性疾患としてのシェーグレン症候群を再認識し、さらに合併するほかの自己免疫疾患やIgG4関連疾患の理解を深める機会になれば幸甚です。また、若い先生たちには活発な議論に関わって頂き、将来につながる経験を積んで頂く機会になることを祈念しています。

 最後となりますが、このように私にとって大変思い入れの深い本学会を主宰させて頂くに当たっては、顧問の小池隆夫先生にご推薦を賜り、また歴代の理事長である住田孝之教授、竹内勤教授、さらに現理事長の川上純教授にサポート頂いたことに深謝申し上げます。当科は2017年に立ち上がった大変小さな学科目であり、至らない点も多々あろうかと思いますが、皆様のご参加・ご発表を心よりお待ちしております。

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